相続登記の義務化とは?
令和6年4月1日から相続登記が義務化されました、という報道やポスターをよく見かけます。
問い合わせもありますのでまとめてみたいと思います。
なぜ義務化されたのか?
今回、相続登記が義務化された背景には「所有者不明の土地」が増加していることが挙げられます。
なんとその面積は日本中合わせると九州の面積より広いそうです。
私は以前、用地買収の仕事をしていたのですが、確かに道路や砂防堰堤の用地の中にはほぼ必ずと言っていいほど所有者不明土地がありました。
戸籍を調べると相続が数次で発生して関係人が100人以上とか、あるいは相続人が海外に行ってしまい現在は連絡不能、とかどう手をつけたものやら、という状況で公共事業の大きな妨げになっていました。また、所有者不明土地は管理もできず、周囲に危険を及ぼしたり周辺環境を悪化させるリスクも高まります。
相続登記をしないとまずいのか?
それを解消しようということで今回、対策の一つとして相続登記が義務付けられました。改正されたのは不動産登記法です。
相続人は、不動産(土地・建物)を相続・遺贈で取得したことを知ったときから3年以内に相続登記申請をすることが義務となりました。また、遺産分割協議をして不動産を取得した場合も、遺産分割から3年以内に登記をする必要があります。
申請をすべき義務のある者が正当な理由なく相続登記をしない場合、10万円以下の過料が科される可能性があります(同法第164条)。
まず何をすればいいのか?
質問として多いのは「義務化されたらしいけど何かしないとだめなの?」という質問です。
今回の改正で注意すべきは、令和6年4月1日より前に相続した不動産も義務化の対象になることです。「相続の開始と所有権の取得を知った日から3年以内」と「令和9年3月31日」のいずれか遅い日までに登記が必要となります。
10万円取られる!と思うと慌ててしまいますが、「相続人申告登記」という救済制度が設けられています。
3年以内に相続人が「登記名義人の相続が発生したこと、自らが名義人の相続人であることを登記所(法務局)に申し出る」ことで所有権移転登記の申請義務を「とりあえず」果たしたものとみなされる制度です。
この制度は、
・相続人が複数いても特定の相続人が単独で申し出できる
・相続範囲や相続分の割合の確定までは不要(自分が相続人であることを証明する以外の戸籍を取り寄せる必要なし)
・申請費用がかからない(自分の戸籍収集や郵送費はかかります。)
という特徴があります。 ※詳細は法務省のHP参照→https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00602.html
ただし、この制度を使っても所有権移転や持ち分の登記はされず(付記登記で登記簿に名前が表示されるのみ)、相続した不動産を売却したり、抵当権の設定をしたりするような場合には、別途、相続登記の申請をする必要があります。
あくまで遺産分割ができない場合の非常的な措置と考えて、通常は遺産分割協議をすすめて相続登記をする流れが間違いないでしょう。
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