コラム

農地の貸し借りも許可が必要です。

今回も農地法第3条の話です。高齢などの理由で田んぼや畑を耕せなくなってくると、そのままにしておく訳にもいかないので近所の人に貸したりするケースはよくあります。農地は有効活用できますから喜ばしいことではありますがこれにも許可が必要です。

正規の手続きを踏まず農地の貸し借りをしているとトラブルの原因になるおそれがあります。

農地の貸借は農地法第3条の許可が必要

農地の権利移動ですから農地法第3条です。(甲府市農業委員会→https://www.city.kofu.yamanashi.jp/nogyo/noutihou.html

農地法第3条(農地又は採草放牧地の権利移動の制限)
 農地又は採草放牧地について所有権を移転し、又は地上権、永小作権、質権、使用貸借による権利、賃借権若しくはその他の使用及び収益を目的とする権利を設定し、若しくは移転する場合には、政令で定めるところにより、当事者が農業委員会の許可を受けなければならない。

賃貸借も無償の使用貸借も、譲渡時と同様の許可要件を満たすことが必要となります。農地法3条許可の申請先は市町村の農業委員会で、許可も農業委員会からおります。

農地の貸借は土地を返してもらうときに注意が必要

農地の貸し借りで注意が必要なのは土地を返してもらうときです。農地法第17条と第18条にはこう書かれています。

(農地又は採草放牧地の賃貸借の更新)
第17条 農地又は採草放牧地の賃貸借について期間の定めがある場合において、その当事者が、その期間の満了の一年前から六月前まで(賃貸人又はその世帯員等の死亡又は第二条第二項に掲げる事由によりその土地について耕作、採草又は家畜の放牧をすることができないため、一時賃貸をしたことが明らかな場合は、その期間の満了の六月前から一月前まで)の間に、相手方に対して更新をしない旨の通知をしないときは、従前の賃貸借と同一の条件で更に賃貸借をしたものとみなす。ただし、水田裏作を目的とする賃貸借でその期間が一年未満であるもの、第三十七条から第四十条までの規定によつて設定された農地中間管理権に係る賃貸借及び農地中間管理事業の推進に関する法律第十八条第七項の規定による公告があつた農用地利用集積等促進計画の定めるところによつて設定され、又は移転された賃借権に係る賃貸借については、この限りでない。

(農地又は採草放牧地の賃貸借の解約等の制限)
第18条 農地又は採草放牧地の賃貸借の当事者は、政令で定めるところにより都道府県知事の許可を受けなければ、賃貸借の解除をし、解約の申入れをし、合意による解約をし、又は賃貸借の更新をしない旨の通知をしてはならない。

長いので要約すると第17条は、期間の定めのある賃貸借の場合、期間満了の1年~6月前の間に相手方に「更新しない」と通知しないと、従前と同一の条件で更新されたことになりますよ(法定更新)。第18条は更新を解除するには都道府県知事の許可を得なければ解除などできませんよ、と書いてあります。耕作権の保護が強いですね。

使用貸借の場合はこの規定が適用されませんので民法が適用されます。つまり貸借期間が終了すれば返還することになりますし(民法597条1項)、期間満了前に借主が死亡した場合は権利が消滅します(同条3項。賃貸借の場合、賃借権は相続されます)。

農地法以外での貸し借りもあり

農地の貸し借りは農地法による法定更新や解除の許可等の制限がありますが、より円滑に貸し借りができるようにする方法として、農業経営基盤強化促進法の利用権設定(甲府市農業委員会→https://www.city.kofu.yamanashi.jp/nogyo/noutiginnkouseido.html)や農地中間管理事業(山梨県農業振興公社→http://www.y-nk.jp/project_lease-rental/)などの制度もあります。これらを利用すると、農地法の制限によらず農地の貸出が可能となります。