コラム

自治体独自の基準(ローカルルール)←「間違い」との違いが…

許認可業務をやっているとよくぶち当たる「自治体独自の審査基準」。
条例で定められている場合はともかくですが、「手引」に書かれているとか、担当者の裁量だけのようなものはかなり根拠が曖昧ですよね。

今回、建設業許可の関係で困ったケースが出ましたので備忘録として書いておきます。怒りで長文です(笑)。

他都県ではOKの事例でも「独自基準」の壁が…

新しい役員の方に営業所の経営業務責任者になってもらおうとしたケースです。
経営業務管理責任者になるためには、「建設業の経営経験5年」という要件があります。

この方の場合、以前勤めていた建設会社Aで10年近く役員をしておられました。これは閉鎖登記簿で確認できました。
A社は建設業許可を持っていて公共工事もかなりやっていたそうです。
ただこのA社はこの方が退社した後しばらくして廃業してしまったのですね。

建設業許可に関する書籍、WEBサイトなど調べると「建設業許可を有している会社」で「役員」であったことが登記簿等で確認できれば経営経験を有するものと判断すると書いてあったので、これでOKと山梨県に相談しました。
すると「山梨県ではこれに加えて当時の工事契約書を事業年度毎に1件ずつの提示が必要」との指示。根拠は山梨県の「建設業許可の手引」とのこと。

ただ山梨県の手引には「許可を有する建設業者における経験の証明をする場合は、当該法人に係る許可通知書及び許可申請書副本に添付の常勤役員等証明書等の書類で代替できる場合があります」との記載がありました。
この書類は県にも保存してあるはずなので開示請求できますか?と聞いたところ廃業から5年以上経過しているので廃棄しました、とのご回答(ただし、当時建設業許可を取っていたことはデータで確認できるとのこと)。

困った。連絡もつかない業者の書類を集めなければなりません。
新役員の方が当時の公共工事のリストを持っていて、それを手がかりに工事の発注機関に端から開示請求しました。
しかし集まったのは4年分…(それでもよく集まったと思います。発注機関の皆様ご協力いただきありがとうございました。)
今の会社で役員になって、あと1年待たねばなりません。

「独自の基準」と言い張られても「間違い」との境目がわからない

そんな折、東京で開催された某セミナーに参加後、東京都で開業されている行政書士の先生(書籍も多数出版されている方)に懇親会でこの話をしてみたところ、「それはおかしいでしょ。特定(特定行政書士=不服申立ての代理人ができる)の権利を行使したほうがいいですよ。」と呆れたようにおっしゃいました。

そうなんですよ。国土交通省の経営業務管理責任者に関する説明資料、関東地方整備局、東京都・神奈川県など近隣都県の手引を見ても「建設業許可を有している場合」は閉鎖登記簿等で確認、「許可を有していない場合」は工事契約書等で確認と明らかに書いてある。
許可が無い業者さんは確かに工事をやっていなければ建設業なのかどうかわからないですが、山梨県では建設業許可を持っているだけでは建設業ではないらしいです。

しかし、山梨県の手引でも建設業許可申請時の書類があればいい、と記載されているのだから、建設業許可があるとわかっているのに「工事契約書も提示しろ」は矛盾していませんか?要は今回の指示ってただの「間違い」じゃないの?
これらを指摘しても「許可の判断には自治体の裁量が認められている。山梨県は他県に比べて厳しくやっているんです。」とのご主張。

独自に厳しい基準を設けるには合理的な理由が必要ではないか?

山梨県の建設業者だけ基準を厳しくする合理的理由があるのでしょうか?名義貸しでも横行しているのでしょうか?(聞いたこともありませんが)。しかも当時の書類の有無がどういった効果の違いを生むのでしょう?
10年もの役員経験があっても昔の書類が無いと経営業務管理責任者になれない、しかも山梨県だけって極めて不当な制限だと思います(いや間違いだと思います)。

最近の深刻な人手不足と技術の進歩(遠隔監視など)で建設業法も人材面(経営業務管理者や専任技術者、現場専任など)の要件をどんどん緩和しているんですよね。人材の流動化を妨げる時代遅れの基準だと思います(いや間違いだと思います)。

今回の件は工事契約書類4年分+様々な関連資料の提示ということで役員経験が認められました(認められてしまった)。しかし他の多くの業者さん、行政書士さんはあきらめてしまうケースではないでしょうか。
同様のケースがありましたら「認めた事例を知っている」と主張してください。