建退共ってなんですか?
「建退共」は一般には馴染みのない言葉です。公共工事を受注する建設業者の方ならご存知だと思いますが、まだ建設業を始めたばかりの方などの場合、よくわからない制度だと思いますので書いてみたいと思います。
「建退共」は「建設業退職金共済制度」の略称
「建退共」は「建設業退職金共済制度」の略称です。つまり退職者制度の一つということになります。
特徴は次のとおりです。
1.国の定めた制度で、確実に支払いが行われる
2.雇用される事業主が変わってもそれぞれの期間が通算される
3.掛金の一部に助成がある
4.掛金は全額損金となる
5.経営事項審査で加点がある
6.会社ではなく建設業界から引退するときに請求する
対象となる人(被共済者)は「工事現場で働く労働者」です。警備員さんなども対象となりますし、一人親方も任意組合をつくれば加入できます。
「中退共」とは違うのか?
似た名前の制度に「中退共」、中小企業退職金共済制度があります。こちらは業種に関係なく中小企業を対象とした退職金制度です。建退共は現場の職人さん向け、中退共は社内の事務職や営業職の方が対象というイメージですね。
具体的には、建退共は事業主が加入(契約者)し、現場で働く作業員が被共済者となります。被共済者には共済手帳が交付されます。
契約者は1日あたり320円の証紙を購入(これが掛金となる)し、被共済者が現場に入場した日数分の証紙が賃金支払いの際に払い出され、それを手帳に貼り付け消印が行われます(大昔、母が集めていた商店街のクーポンを思い出します。昭和です)。
建退共は会社というより業界全体の制度
退職金の支払いが行われるのは特定の会社をやめた時ではなく、「建設業界から引退する時」です。
まさに、職人さんを業界で守る制度ですね。
特に公共工事においては、証紙を元請で一括して購入することが求められることがあるようで、公共工事を直接受注するためには加入はほぼ必須だと思われます(制度としては加入はあくまで任意です。自社の退職金制度がある場合や中退共に加入している場合などは下請に交付するために会社が加入だけしているケースもあるようです)。また、下請業者も加入しておけば元請から証紙の交付があるわけですからこの点はメリットと言えるでしょう。
また、掛金の納付についても現物の証紙ではなく電子申請で手続きが可能となっています(退職金ポイント制度)。これが建設キャリアアップシステム(CCUS)の就業履歴と連携できるようになっているそうで、CCUSは国交省の肝いりですから今後はこちらの普及にも力が入ることでしょう。
「建退共」加入は経審のポイントアップに!「中退共」も?
経営事項審査において、「建退共」への加入は、社会性等の評点(W)でP点換算19.7点の加点があります(ただし、建退共は証紙交付・消印の履行実績などの発行基準をクリアしないと履行証明が出ない点は注意です)。
その下を見ると退職一時金制度若しくは企業年金制度の有無ということで「中退共」にも加入すれば同じ加点があります。
これはどちらか一方ではなく、2つの制度に加入していれば2つとも加点になります。
同一人物は「建退共」と「中退共」同時に加入することはできないのですが、事業者としては2つとも加入できます。
つまり現場のAさん、Bさんは建退共、内勤のCさんと営業のDさんは中退共、といったイメージです。
このため、小さい会社でも無理に両方加入するため一人だけ建退共にして「なんで俺だけ建退共?」といった混乱もあるようです。
似た名前ですが目的が違う2つの制度。実情に合わせ従業員の方の理解を得ながら進めてくださいね。